ジージとくらさんの文学談義2026年10月22日
文学しらべ
問いを重ねて、日本文学を読む

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No.23新着 これからの出版業界(2024年〜) AI・海外・耳で聴く本と、6割が本を読まない国

生成AIは著作権と翻訳の両面で出版を揺さぶり、文化庁は2024年3月に考え方を整理した。海外では日本の小説の英訳が評価を高め、2025年には王谷晶『ババヤガの夜』が日本人初の英国ダガー賞翻訳部門を受賞した。一方、国内では2024年初めの文化庁調査で、月に1冊も本を読まない人が62.6%に達した。

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出典を確かめた日
2026年10月22日
分野
出版業界のこれから
立場
くらさんの考察
タグ
海外とのつながり電子書籍数字・統計女性と文学
作家・作品
王谷晶、ババヤガの夜、柚木麻子、BUTTER、鴻巣友季子、文化庁「国語に関する世論調査」
資料の種類
公的機関の解説
年代
2024年〜現在

本文と出典

あらまし

これからの出版を左右しそうな動きは四つある。一つ目は生成AIで、作品が無断で学習に使われる不安と、翻訳を安く速くする期待の両方を持ち込んだ。二つ目は海外市場で、国はコンテンツの海外売上を2033年に20兆円にする目標を掲げ、日本の小説も英語圏で読まれ始めた。三つ目はオーディオブックのような新しい読み方である。四つ目が国内の読書離れで、これが一番重い。

主なできごと

・2022年1月27日 Amazonのオーディブルが日本で聴き放題に移行
・2024年3月15日 文化審議会の小委員会が「AIと著作権に関する考え方について」をまとめる
・2024年5月7日 AIでマンガを英訳する株式会社オレンジが29.2億円を調達(小学館も出資)。月500冊の翻訳を目指すとした
・2024年6月 政府の「新たなクールジャパン戦略」がコンテンツ産業を基幹産業とし、2033年の海外売上20兆円を目標にする
・2024年7月31日 文化庁が「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」を公表
・2024年1〜3月 文化庁「国語に関する世論調査」(2023年度)を実施。月に1冊も本を読まない人が62.6%
・2025年6月 経済産業省「エンタメ・クリエイティブ産業戦略」
・2025年夏 王谷晶『ババヤガの夜』(サム・ベット訳)が英国推理作家協会のダガー賞翻訳部門を受賞。日本人作家として初めて

AIと著作権・翻訳

文化庁の「考え方」は、AIの開発・学習の段階と、生成・利用の段階を分けて整理したものである。法的な拘束力はなく、裁判例が積み上がっていない中での目安という位置づけだ。作家や出版社にとっての心配は、作品を勝手に学ばれて作風をまねた文章が出回ることである。経済産業省の戦略(2025年6月)も、生成AIの登場で日本が得意とするマンガやアニメの優位が中長期的に下がるおそれを指摘している。
同じ戦略は、マンガの現地語翻訳で新しい技術を使い、海外で正規版が足りない状況を変えることを支援するとしている。オレンジ社はAIで翻訳の下地を作り、人の翻訳者と写植者が仕上げる方式をとる。マンガで先に進んだこの流れが小説にも及ぶかどうかは、まだ分からない。

海外市場と翻訳出版

日本発コンテンツの海外売上は2023年で約5.8兆円とされ、10年で約3倍になった。ただし経済産業省は、出版は国内市場に比べて海外売上が小さいと認め、マンガの海賊版被害が世界で約2兆円にのぼると見積もっている。
文芸でも変化がある。2025年のダガー賞翻訳部門は『ババヤガの夜』が受賞し、柚木麻子『BUTTER』(ポリー・バートン訳)も候補に入った。鴻巣友季子『なぜ日本文学は英米で人気があるのか』(2025年12月)の書評によれば、2010年代以降、多和田葉子・川上未映子・小川洋子・村田沙耶香ら女性作家の小説が海外の主な文学賞で目立つようになった。背景として、文化庁の現代日本文学の翻訳・普及事業や、若手翻訳者の育成が挙げられている。

耳で聴く本

米国オーディオ出版協会によると、米国のオーディオブック売上は2025年に24億3,000万ドル(約3,900億円、前年比9%増)だった。日本ではオーディブルが2022年に聴き放題へ移り、1年で会員が約5割増えたと同社は発表した。インプレス総合研究所は、直販のデジタル雑誌とオーディオブックを合わせた市場を約320億円と暫定的に見積もっている。日本のオーディオブック単独の最新の市場規模は確認できなかった。目の衰えた高齢者にとって、耳で聴く本は読書を続ける手段にもなる。

読書離れ

文化庁の「国語に関する世論調査」(2023年度、全国16歳以上6,000人に郵送、回答3,559人)では、電子書籍を含めて1か月に1冊も本を読まない人が62.6%だった。これまで4割台で推移していた割合が急に増えた。読書量が減った理由(二つまで)は「スマートフォンなどで時間が取られる」43.6%、「仕事や勉強が忙しい」38.9%、「視力など健康上の理由」31.2%だった。ただし、国語辞典編纂者の飯間浩明は、前回と調べ方が違うので本当に増えたかどうかには議論があると指摘している。

評価の分かれる点

AI翻訳については、「翻訳されないまま埋もれていた作品が世界に出る好機」とする見方と、「翻訳者の仕事と訳文の質を損なう」とする見方がある。62.6%という数字も、調べ方の変化を考えれば割り引くべきだという意見がある。

くらさんの考察

明るい材料はある。2025年の紙の書籍は4年ぶりに前年を上回り、翻訳された日本の小説は海外で賞を取るようになった。暗い材料は、国内で本を読む人が減り、読む時間をスマートフォンに取られていることだ。海外の読者とAI翻訳が日本の小説の「外の市場」を広げても、国内で新しい作家を育てる読者が細れば、輸出する作品そのものが先細ると考えられる。出版業界の課題は、売り方より先に、本を読む時間をどう取り戻すかにあるのではないか。

ジージへの問いかけ

・ジージはこの1か月に何冊の本を読みましたか。若いころと比べて増えましたか、減りましたか
・AIが訳した小説を読むことに、抵抗はありますか
・目が疲れたとき、本を耳で聴いてみたいと思いますか

出典

・文化庁「AIと著作権について」 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/aiandcopyright.html
・経済産業省「エンタメ・クリエイティブ産業戦略」(2025年6月) https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/entertainment_creative/pdf/20250624_1.pdf
・THE BRIDGE「オレンジ、プレシリーズAで29.2億円を調達」(2024-05-07) https://thebridge.jp/2024/05/orange-pre-series-a-round-funding
・文春オンライン 江南亜美子「なぜ日本文学は英米で人気があるのか」書評(2026-03-02) https://bunshun.jp/articles/-/86489
・nippon.com「1か月に本を1冊も読まない人が6割超」 https://www.nippon.com/ja/japan-data/h02135/
・文藝春秋 飯間浩明の記事 https://bunshun.jp/bungeishunju/articles/h8708
・カレントアウェアネス・ポータル「米国オーディオ出版協会、2025年の売上」(2026-06-10) https://current.ndl.go.jp/car/279316
・鉄道チャンネル「Amazon Audible 聴き放題でユーザ数50%増」(2023-02-02) https://tetsudo-ch.com/12869615.html
・PR TIMES インプレス『電子書籍ビジネス調査報告書2026』(2026-07-23) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000007525.000005875.html
・出版科学研究所 ニュースリリース「2025年出版市場」(2026-01-26) https://shuppankagaku.com/wp/wp-content/uploads/2026/01/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B92601.pdf

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