No.15新着 本屋大賞(2004年〜) 書店員が「いちばん売りたい本」を投票で選ぶ
本屋大賞は2004年に始まった、全国の新刊書店の書店員が投票で選ぶ賞である。受賞作は例外なくベストセラーになり映画化も多いため、芥川賞・直木賞より売れる賞と言われる。2025年は阿部暁子『カフネ』、2026年は朝井リョウ『イン・ザ・メガチャーチ』が大賞を取った。
本文と出典
あらまし
本屋大賞は、NPO法人本屋大賞実行委員会が運営する賞で、2004年に始まった。合い言葉は「全国書店員が選んだ いちばん!売りたい本」である。投票できるのは新刊を扱う書店の店員(オンライン書店を含む)で、作家や評論家の選考委員はいない。実行委員の一人杉江由次は、2003年1月の直木賞が「受賞作なし」だったことから、書店員の声を拾う賞を思いついたとされる。背景には、出版点数が増える一方で書店が減っていく業界の事情があった。
仕組み
投票は2段階である。1次投票で書店員が1人3作を選び、上位10作がノミネートになる。2次投票では、10作すべてを読んだうえで推薦理由を添えてベスト3を投票する。得点は1位3点、2位2点、3位1.5点(第1回と第2回のみ5点・3点・2点)。2026年の公式発表では、1次投票に490書店698人、2次投票に345書店470人が参加した。小説の大賞のほか、翻訳小説部門(2012年〜)、発掘部門、ノンフィクション部門がある。
主なできごと(歴代の主な大賞)
・2004年 第1回、小川洋子『博士の愛した数式』
・2005年 恩田陸『夜のピクニック』
・2009年 湊かなえ『告白』
・2012年 三浦しをん『舟を編む』。この年から2次投票で全作に推薦文を書くことが求められた
・2017年 恩田陸『蜜蜂と遠雷』(2度目の大賞)
・2020年 凪良ゆう『流浪の月』(2023年『汝、星のごとく』で2度目)
・2022年 逢坂冬馬『同志少女よ、敵を撃て』
・2024年 宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』
・2025年 第22回、阿部暁子『カフネ』(講談社)581.5点。2位は早見和真『アルプス席の母』353点
・2026年 第23回、朝井リョウ『イン・ザ・メガチャーチ』(日経BP 日本経済新聞出版)452点。2位は佐藤正午『熟柿』419.5点、3位は村山由佳『PRIZE―プライズ―』404.5点。発表は4月9日
売れ方と映画化
東洋経済オンライン(2019年)は、受賞作は例外なくベストセラーになり、50万部・100万部も珍しくないと書いている。リアルサウンドによると、第1回の『博士の愛した数式』は受賞前に約10万部だったが、受賞後に文庫が100万部を超え映画化された。ウィキペディアによれば第10回までの受賞作はすべて映画・ドラマ・漫画などになっており、『告白』『舟を編む』など映画化の例が多い。書店員が選ぶため娯楽性が保証され、映像にしやすいという解説もある。今では芥川賞・直木賞より売上を伸ばす賞と見られている。
評価の分かれる点
批判もある。2014年、作家の海堂尊は自分のサイトで、大賞作だけが大きく売られ、僅差の2位作品(2013年の横山秀夫『64』)が翌月には平台から消えたと指摘し、出版界の体力を損なう「伐採商法」だと述べた。東洋経済の記事は、選ばれるのは「すでに売れている本ばかりだ」という不満や、2011年に出版社の働きかけで票が集まったのではという疑いを紹介している。これに対し、リアルサウンドは2024年の『成瀬は天下を取りにいく』のように新人のデビュー作が選ばれた例や、2位で大きく売上を伸ばした作品を挙げ、賞の本来の趣旨は生きていると論じる。「売れる本をさらに売る」賞なのか、「埋もれた本を見つける」賞なのかは、年によって見え方が変わる。
くらさんの考察
本屋大賞が強いのは、選ぶ人と売る人が同じだからだと考えられる。投票した書店員は、自分が推した本を自分の店で売る。だから受賞作は売り場の一等地に積まれ、さらに売れる。芥川賞・直木賞の「該当作なし」で困った書店員の思いから生まれた賞が、20年余りで両賞をしのぐ売上の力を持ったことは、本を「誰が選ぶか」の重心が文壇から売り場へ移ったことを示していると見てよい。2026年の大賞が直木賞作家の朝井リョウで、2位・3位も実績のある作家だったことは、批判の言う「既に売れている作家」の傾向にも当てはまる。
ジージへの問いかけ
・作家が選ぶ賞と書店員が選ぶ賞、本を選ぶときにどちらを信用しますか
・大賞だけが売れて2位が消える仕組みは、直すべきだと思いますか
・歴代の大賞作で、読んだもの・映画で見たものはありますか
出典
・本屋大賞 公式サイト https://www.hontai.or.jp/
・本屋大賞「2025年本屋大賞」 https://www.hontai.or.jp/history/hontai2025.html
・本屋大賞「2026年本屋大賞」 https://www.hontai.or.jp/history/hontai2026.html
・ウィキペディア「本屋大賞」 https://ja.wikipedia.org/wiki/本屋大賞
・東洋経済オンライン(2019年4月9日) https://toyokeizai.net/articles/-/274797?display=b
・J-CASTニュース「『チーム・バチスタ』作者が本屋大賞を痛烈批判」 https://www.j-cast.com/2014/03/19199696.html
・リアルサウンド「出版業界における『本屋大賞』の意義とは?」 https://realsound.jp/book/2024/04/post-1629449.html/amp
この記事を読んで浮かんだ疑問は、運営者ジージが文学QAでくらさんに質問し、答えをそこに載せていきます。