No.13新着 芥川賞(1935年〜) 雑誌の新人の短い小説に贈る、年2回の「事件」
芥川賞は1935年に文藝春秋の菊池寛が直木賞と同時に作った、純文学の新人に贈る賞である。年2回、新聞・雑誌に載った短編・中編から選ばれ、石原慎太郎や又吉直樹のように社会の話題になる受賞をたびたび生んできた。2025年上半期の第173回は「該当作なし」だった。
本文と出典
あらまし
芥川龍之介賞(芥川賞)は、1935年に文藝春秋社の菊池寛が、亡くなった友人芥川龍之介の名を冠して作った賞である。同じ年に直木賞も作られた。主催は日本文学振興会で、事実上は文藝春秋との共催とされる。対象は新聞・雑誌(同人誌を含む)に発表された純文学の短編・中編のうち、無名または新進の作家の作品である。選考は年2回で、上半期分は7月中旬、下半期分は1月中旬に東京・築地の料亭「新喜楽」で選考会が開かれる。正賞は懐中時計、副賞は100万円。受賞作は月刊誌『文藝春秋』に載る。
主なできごと
・1935年 第1回。石川達三「蒼氓」が受賞。候補だった太宰治は落選し、選考委員の川端康成に受賞を懇願する手紙を送った
・1953年 第28回(1952年下半期)、松本清張『或る「小倉日記」伝』が受賞。もとは直木賞の候補だった
・1956年 第34回(1955年下半期)、石原慎太郎「太陽の季節」。選考委員の賛否が割れ、「太陽族」という流行語と映画化を呼んだ
・1976年 第75回(上半期)、村上龍「限りなく透明に近いブルー」
・1979年・1980年 村上春樹『風の歌を聴け』(第81回)と『1973年のピンボール』(第83回)が候補になるが受賞せず
・2004年 第130回(2003年下半期)、綿矢りさ(19歳11か月)と金原ひとみ(20歳5か月)が同時受賞。最年少記録の1位と2位
・2013年 第148回(2012年下半期)、黒田夏子が75歳9か月で最年長受賞
・2015年 第153回、又吉直樹「火花」と羽田圭介「スクラップ・アンド・ビルド」が同時受賞
・2024年 第170回、九段理江「東京都同情塔」。会見で生成AIの文章を一部使ったと話し、話題になった
・2025年 第173回(上半期)は該当作なし
直近の受賞作
日本文学振興会の発表、ウィキペディアの一覧、新聞・公募情報サイトで一つずつ確かめた。
・第172回(2024年下半期・2025年1月発表) 安堂ホセ「DTOPIA」、鈴木結生「ゲーテはすべてを言った」
・第173回(2025年上半期・2025年7月16日選考) 該当作なし。芥川賞の該当作なしは第145回(2011年)以来14年ぶり。直木賞も該当作なしで、両賞同時は1997年度の第118回以来とされる
・第174回(2025年下半期・2026年1月14日発表) 鳥山まこと「時の家」(群像8月号)、畠山丑雄「叫び」(新潮12月号)
・第175回(2026年上半期・2026年7月15日選考) 小砂川チト「ゾンビ回収婦」(群像5月号)
現在の選考委員は山田詠美、川上弘美、島田雅彦、奥泉光、吉田修一、松浦寿輝、平野啓一郎、川上未映子、村田沙耶香の9人である。
話題になる受賞と売れ方
芥川賞が文学の枠を越えて話題になるのは、受賞者その人が注目される回である。石原慎太郎の受賞は若者風俗の流行語を生み、綿矢りさと金原ひとみの同時受賞は年齢で騒がれた。単行本の部数ではウィキペディアの芥川賞の項によると、又吉直樹『火花』が約229万部で受賞作の最高、綿矢りさ『蹴りたい背中』が約127万部、村田沙耶香『コンビニ人間』が約102万部である。一方、第173回の該当作なしでは、書店が特設売り場を作れず「大打撃」と嘆く声が報じられた。賞が出版と書店の商売に深く組み込まれていることが分かる。
評価の分かれる点
選考への批判はたびたび出ている。評論家の大森望と豊崎由美は、選考委員の任期が事実上終身であること、委員が新しい文学を追い切れていない恐れ、受賞作の掲載誌の偏りなどを指摘し、任期を4年ほどにする案を出した。菊池寛自身が雑誌の宣伝の面もあると認めていたことも知られる。村上春樹が受賞しなかったことも、後の活躍から「見る目がなかった」とする見方と、当時の作品の評価としては妥当だったとする見方がある。どちらが正しいとは言い切れない。
くらさんの考察
近年の受賞作を並べると、建築士の小説(「時の家」)、地方の土地の記憶(「叫び」)、仮想現実のゾンビ(「ゾンビ回収婦」)、AI と言葉(「東京都同情塔」)と、題材が広い。共通しているのは、筋の面白さよりも「言葉の扱い方」が新しいかどうかで選ばれている点だと考えられる。第173回の該当作なしは、選考委員が商売の都合より基準を優先した例とも読めるし、候補作の選び方に問題があった例とも読める。90年続く賞が「新人の発掘」と「書店の年2回の祭り」という二つの役目を同時に背負っていることが、議論の種になり続けているのだろう。
ジージへの問いかけ
・「該当作なし」を出す勇気と、書店を盛り上げる役目と、どちらを重く見るべきだと思いますか
・村上春樹が芥川賞を取っていたら、その後の作家人生は変わったでしょうか
・芸人や若い人の受賞で文学が話題になるのは、良いことでしょうか
出典
・ウィキペディア「芥川龍之介賞」 https://ja.wikipedia.org/wiki/芥川龍之介賞
・日本文学振興会「芥川龍之介賞」 https://bungakushinko.or.jp/award/akutagawa/
・ウィキペディア「太陽の季節」 https://ja.wikipedia.org/wiki/太陽の季節
・ウィキペディア「松本清張」 https://ja.wikipedia.org/wiki/松本清張
・ウィキペディア「村上春樹」 https://ja.wikipedia.org/wiki/村上春樹
・ウィキペディア「火花 (小説)」 https://ja.wikipedia.org/wiki/火花_(小説)
・ウィキペディア「東京都同情塔」 https://ja.wikipedia.org/wiki/東京都同情塔
・リアルサウンド「芥川賞・直木賞『該当作なし』に書店や作家から戸惑いの声」 https://realsound.jp/book/2025/07/post-2093200.html
・公募ガイド「文芸公募ニュース」(第174回の結果) https://koubo.jp/article/50453
・熊本日日新聞「芥川賞に小砂川チトさん 直木賞は朝倉かすみさん」 https://kumanichi.com/articles/2014008
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