No.14新着 直木賞(1935年〜) 大衆文学の賞は「新人発掘」から「中堅への勲章」へ
直木賞は芥川賞と同じ1935年に菊池寛が作った、大衆文学(娯楽小説)の賞である。当初は無名・新進作家が対象だったが、1970年代以降は実績のある中堅作家が受ける賞に変わった。2025年上半期は該当作なし、その後は嶋津輝、朝倉かすみが受賞した。
本文と出典
あらまし
直木三十五賞(直木賞)は、1935年に文藝春秋社の菊池寛が、友人の作家直木三十五を記念して芥川賞と同時に作った。主催は日本文学振興会。対象は、新進・中堅作家による娯楽性のある小説の単行本(長編または短編集)で、芥川賞が雑誌掲載の短い作品を選ぶのとは対象の形が違う。選考は年2回、正賞は懐中時計、副賞は100万円で、受賞作は『オール讀物』に載る。現在の選考委員は林真理子、浅田次郎、宮部みゆき、桐野夏生、角田光代、三浦しをん、京極夏彦、辻村深月、米澤穂信の9人である。
主なできごと
・1935年 第1回。川口松太郎「鶴八鶴次郎」などが受賞
・1943年 山本周五郎が受賞を辞退
・1953年 松本清張『或る「小倉日記」伝』が直木賞の候補から芥川賞の選考に回され、芥川賞を受ける
・1960年 第42回(1959年下半期)、司馬遼太郎『梟の城』
・1980年 第83回(上半期)、向田邦子「花の名前」「かわうそ」「犬小屋」
・1986年 逢坂剛が受賞。ミステリー作家の受賞がまれだった流れが変わる
・1999年 第120回(1998年下半期)、宮部みゆき『理由』
・2006年 第134回(2005年下半期)、東野圭吾『容疑者Xの献身』。6度目の候補での受賞
・2008年 伊坂幸太郎が候補を辞退
・2025年 第173回(上半期)は該当作なし。直木賞では第136回以来18年ぶり
直近の受賞作
・第172回(2024年下半期) 伊与原新『藍を継ぐ海』
・第173回(2025年上半期) 該当作なし
・第174回(2025年下半期・2026年1月14日発表) 嶋津輝『カフェーの帰り道』(東京創元社)
・第175回(2026年上半期・2026年7月15日選考) 朝倉かすみ『けんぐゎい』(光文社)。朝倉は65歳11か月で、歴代3番目の年長受賞とされる。お笑いコンビ「オードリー」の若林正恭『青天』も候補だったが選ばれなかった
嶋津輝は投資会社の仕事がリーマン・ショックで減ったのをきっかけに小説教室に通い、41歳から書き始めた人である。受賞作は大正から昭和の上野のカフェーで働く女給たちを描く。
大衆文学の賞としての性格
ウィキペディアによると、当初の対象は「無名若しくは新進作家の大衆文芸」だった。それが1970年代ごろから中堅作家へ移り、ベテランの受賞も多くなった。このため「遅すぎた受賞」という批判がたびたび出る。受賞作の題材は、時代小説・歴史小説と人情ものが長く中心で、ミステリーが本格的に評価されるのは1980年代後半から、SF やファンタジーの受賞はごく少ない。松本清張の例が示すように、芥川賞との境目もはっきりしておらず、両賞の評価が逆転したように見える回もあった。
評価の分かれる点
直木賞が「新人の賞」なのか「功労賞」なのかは、意見が分かれる。売れっ子作家に何度も候補を重ねさせることを、作家を育てる仕組みと見る人もいれば、賞の権威づけに人気作家を利用していると見る人もいる。伊坂幸太郎の候補辞退は、作家が賞とどう距離を取るかの一例である。2025年12月には、第176回から候補作の発表を1か月早めると発表された。候補作に売れる期間を与えるための変更とされ、該当作なしの回が書店に与えた影響への対応とも受け取れる。
くらさんの考察
芥川賞が「まだ名の知られていない才能」を見つける賞なら、直木賞は「すでに読者がいる作家を、一段上の格に上げる」賞として働いていると考えられる。東野圭吾が6回目で受賞したことや、65歳の朝倉かすみの受賞はその表れだろう。一方で、嶋津輝のように遅く書き始めた人が受ける回もあり、「中堅」の意味は年齢よりも書き続けた年数にあるのかもしれない。時代小説が強い伝統は、第175回の候補に江戸ものが複数あったことにも続いている。
ジージへの問いかけ
・司馬遼太郎や松本清張の作品で、「大衆文学」と「純文学」の線を感じたことはありますか
・直木賞は新人に贈るべきか、長く書いてきた人に贈るべきか、どちらが良いと思いますか
・人気作家が候補を辞退するのは、賞にとって損でしょうか
出典
・ウィキペディア「直木三十五賞」 https://ja.wikipedia.org/wiki/直木三十五賞
・日本文学振興会「直木三十五賞」 https://bungakushinko.or.jp/award/naoki/
・ウィキペディア「東野圭吾」 https://ja.wikipedia.org/wiki/東野圭吾
・ウィキペディア「松本清張」 https://ja.wikipedia.org/wiki/松本清張
・リアルサウンド「芥川賞・直木賞『該当作なし』に書店や作家から戸惑いの声」 https://realsound.jp/book/2025/07/post-2093200.html
・公募ガイド「文芸公募ニュース」(第174回の結果) https://koubo.jp/article/50453
・中央社(台湾)「日本芥川賞頒給鳥山真琴、畠山丑雄 嶋津輝獲直木賞」 https://www.cna.com.tw/news/acul/202601140330.aspx
・熊本日日新聞「芥川賞に小砂川チトさん 直木賞は朝倉かすみさん」 https://kumanichi.com/articles/2014008
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