No.12新着 ライトノベル・ケータイ小説・ウェブ小説(1975年〜現在) 二分法の外で育った読書
ライトノベルは1970〜80年代の少年少女向け文庫から育ち、1990年に名前が付いた。2000年代にはケータイ小説、2010年代には「小説家になろう」などの投稿サイトから書籍化・アニメ化される流れが生まれた。これらは純文学か大衆文学かという古い区別では捉えにくい、読者が書き手にもなる読書である。
本文と出典
あらまし
純文学と大衆文学の区別は、文芸誌と小説誌、芥川賞と直木賞という出版の仕組みの中で生まれた。ライトノベル、ケータイ小説、ウェブ小説は、その仕組みの外側、つまり少年少女向けの文庫、携帯電話、インターネットの投稿サイトから育った。評論家が論じる前に読者が増え、後から出版社が本にするという順番も、従来の文学とは違う。
主なできごと
・1975年 ソノラマ文庫創刊(ライトノベルの起源とする説の一つ)
・1988年 角川スニーカー文庫、富士見ファンタジア文庫創刊。『ロードス島戦記』
・1990年初め パソコン通信ニフティサーブで神北恵太が「ライトノベル」と命名したとされる
・2002年 Yoshi『Deep Love』の書籍版がスターツ出版から出る。ケータイ小説の初の書籍化
・2004年4月 「小説家になろう」開設
・2006年12月 カナダ・トロントでWattpad公開
・2007年 『恋空』映画化。トーハンの文芸書ベストセラー上位3作をケータイ小説が占める
・2012年 文庫ライトノベル市場が284億円でピーク(出版科学研究所)
・2016年2月 KADOKAWAとはてなの「カクヨム」正式オープン
・2021年 韓国のNaverがWattpadの買収を完了。同年の文庫ライトノベル市場は123億円
・2026年 「なろう」発のアニメ化作品が累計200作品を超えたとされる
ライトノベル:文庫レーベルから
ライトノベルの起源には諸説ある。1975年のソノラマ文庫、1977年ごろの新井素子や氷室冴子の登場、1988年の『ロードス島戦記』などが挙げられる。1988年には角川スニーカー文庫と富士見ファンタジア文庫が生まれ、1990年代初めには『スレイヤーズ』がミリオンセラーになった。名前は1990年初め、ニフティサーブの「SFファンタジー・フォーラム」で神北恵太が付けたとされる。中身より先に「文庫レーベル」と「アニメ調の表紙」という器でまとまったジャンルである。
市場は縮んでいる。出版科学研究所の調べでは、文庫ライトノベルの市場は2012年の284億円をピークに、2021年には123億円と半分以下になった。ライターの飯田一史は2023年の記事で、単行本や電子版を合わせたライトノベル市場全体を200億円前後かそれ以下と推計している。2024〜2025年のライトノベル単独の数字は、今回確かめられなかった。参考として、出版科学研究所によれば2025年の出版市場全体(紙と電子)は1兆5,462億円で、前年より1.6%減った。
ケータイ小説:2007年の頂点
ケータイ小説は、携帯電話で書かれ、携帯電話で読まれた小説である。2002年にYoshi『Deep Love』の書籍版がスターツ出版から出て、ケータイ小説として初めて書籍化された。2005年ごろからは無料ホームページ作成サイト「魔法のiらんど」発の作品が人気を集め、美嘉『恋空』は2007年に映画化された。同年のトーハン調べ文芸書ベストセラーでは、上位3作をケータイ小説が独占し、上位10作のうち5作を占めた。
ブームは短かった。2008年には大手書店の年間ベストセラー上位から姿を消し始め、同じ年に日本でiPhoneが発売された。スマートフォンに対応しないサイトが多かったことが衰退の一因とされる。ただし、ブームは終わっても一定の読者と書籍化は続いているという反論もある。
ウェブ小説:なろう・カクヨムから書籍化、アニメ化
「小説家になろう」は2004年4月に個人サイトとして始まり、2010年からはヒナプロジェクトが運営している。2026年10月22日に公式サイトで確かめた時点で、作品掲載数は1,345,131作品、登録ユーザー数は2,982,823人だった。書籍化は2010年の3作から2015年には625作まで増え、2013年には『ログ・ホライズン』がテレビアニメになった。サイト内では「異世界転生」「異世界転移」が人気ジャンルとして独立したランキングを持ち、このサイト発の作品群は「なろう系」と呼ばれる。ただしこの呼び方は揶揄として使われることもある。
KADOKAWAとはてなは2016年2月に「カクヨム」を正式に開いた。2019年には書き手に広告収益を還元する仕組みを、2024年には有料の読書サブスク「カクヨムネクスト」を始めている。投稿サイトが、書籍化を待たずに書き手へお金を払う場になりつつある。
海外:Wattpad
同じ動きは海外にもある。カナダ・トロントのWattpadは2006年に始まり、2021年に韓国のNaverが6億ドルで買収した。Wattpadに投稿された作品から、アンナ・トッド『After』(2019年公開)が劇場映画に、ベス・リークルズ『The Kissing Booth』(2018年)がNetflixの映画になった。利用者数はウィキペディアの記述の中でも食い違いがあり、正確な最新値は確かめられなかった。
評価の分かれる点
ライトノベルやウェブ小説を「大衆文学の一部」とみるか、「別の読書文化」とみるかは意見が分かれる。「なろう系」を似た作品の量産とみる批判的な見方がある一方、読者の好みを素早く映す仕組みとして評価する見方もある。ケータイ小説についても、ブームは終わったとする見方と、形を変えて続いているとする見方がある。
くらさんの考察
純文学と大衆文学の区別は、どちらも「編集者が選んで雑誌に載せる」ことを前提にしていた。ウェブ小説ではその順番が逆になり、まず誰でも投稿し、読者の数が見えたものを出版社が拾う。こうなると、芸術か娯楽かという中身の問いより、「どこで読まれ、何人に読まれたか」が作品の運命を決める。純文学・大衆文学という二分法が今ぼやけて見えるのは、作品が変わったからというより、作品を世に出す入り口が変わったためと考えられる。
ジージへの問いかけ
・お孫さんや若い人が、スマートフォンで小説を読んでいる姿を見たことはありますか。
・誰でも書いて発表できる今のしくみと、編集者が選んだものだけが本になった昔のしくみ、どちらに良いところがあると思いますか。
・アニメやマンガの原作が小説だと知って、驚いたことはあるでしょうか。
出典
・ウィキペディア「ライトノベル」 https://ja.wikipedia.org/wiki/ライトノベル
・ウィキペディア「ケータイ小説」 https://ja.wikipedia.org/wiki/ケータイ小説
・ウィキペディア「小説家になろう」 https://ja.wikipedia.org/wiki/小説家になろう
・小説家になろう(公式サイト) https://syosetu.com/
・ウィキペディア「カクヨム」 https://ja.wikipedia.org/wiki/カクヨム
・Wikipedia "Wattpad" https://en.wikipedia.org/wiki/Wattpad
・マネー現代 飯田一史「『小説はつまらなくて、マンガはおもしろい』から売れないのか…文芸市場が抱える課題(前編)」(2023年12月30日) https://gendai.media/articles/-/120681
・カレントアウェアネス・ポータル(国立国会図書館)2025年の出版市場の記事 https://current.ndl.go.jp/car/270088
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