ジージとくらさんの文学談義2026年10月22日
文学しらべ
問いを重ねて、日本文学を読む

文学史日本文学の流れ

漢字を借りて日本語を書きとめた上代から、ネットで小説が生まれる令和まで。時代ごとに1本ずつの記事にしました。 各記事の終わりに「ジージへの問いかけ」があります。読んで浮かんだ疑問は談義で答えます。

上代(〜794)

  1. 上代の文学(〜794年) 漢字を借りて日本語を書きとめた時代No.1

    日本にはもともと文字がなく、歌や神話は口で伝えられていた。8世紀に入ると、中国の漢字を借りて日本語を書く工夫が実り、古事記・日本書紀・風土記・万葉集がそろって生まれた。漢字の音だけを借りる「万葉仮名」は、のちの平仮名・片仮名のもとになった。

中古・平安(794〜1185)

  1. 平安の文学(794〜1185年) かな文字が女性の物語と日記を生んだNo.2

    9世紀に万葉仮名から平仮名が生まれ、905年の古今和歌集で公の場にも使われるようになった。平仮名で日本語をそのまま書けるようになったことで、物語と日記の文学が育った。10世紀後半から11世紀には、宮中に仕える女性たちが源氏物語や枕草子を書き、文学の中心になった。

中世(1185〜1603)

  1. 中世の文学(1185〜1603年) 戦乱と無常が語りと芸能を広げたNo.3

    武士の時代になると、文学の担い手と受け手が貴族の外へ広がった。平家物語は琵琶法師が語って聞かせ、能は将軍の後押しで芸術になり、連歌は大勢で一つの作品を作った。戦乱や災害を背景に、無常を見つめる随筆も書かれた。

近世・江戸(1603〜1868)

  1. 江戸の文学(1603〜1868年) 木版の本屋と町人の読者が文学を商売にしたNo.4

    江戸時代、本は寺や貴族のものから、本屋が作って売る商品になった。寛永ごろに木版印刷が主流になり、京都・大坂、のちに江戸で出版が盛んになった。町人の読者と貸本屋に支えられ、西鶴・芭蕉・近松から馬琴・一九まで、原稿料で暮らす作家も現れた。

近代(1868〜1945)

  1. 明治の文学(1868〜1912) 話すように書く文章と「私」を書く小説が生まれたNo.5

    明治の文学は、坪内逍遥の『小説神髄』が「人の心を写す」ことを小説の目的に据えたところから動き出した。二葉亭四迷らの言文一致で書き言葉が話し言葉に近づき、紅葉・一葉・子規・晶子・鷗外・漱石が登場する。明治末には藤村『破戒』と花袋『蒲団』から自然主義が広がり、作者の体験をそのまま書く私小説の流れが始まった。

  2. 大正から昭和戦前・戦中の文学(1910〜1945) 理想・技巧・階級、そして戦争No.6

    大正の文学は、学習院出身の白樺派が理想主義を掲げ、芥川龍之介や谷崎潤一郎が技巧を凝らした作品で読者をつかんだ。昭和に入ると新感覚派とプロレタリア文学が並び立つ一方、円本や雑誌『キング』で本と雑誌が大衆のものになった。戦争が深まると弾圧と統制で書けることが狭まり、文学者は国策に組み込まれていった。

現代(1945〜)

  1. 戦後から昭和の終わりまでの文学(1945〜1989) 焼け跡から世界へ、純文学と大衆小説の黄金期No.7

    敗戦直後、坂口安吾や太宰治ら無頼派が既成の文学に反発し、戦争体験を背負った戦後派が西洋の長編の技法を持ち込んだ。1950年代には日常を描く第三の新人、社会派推理の松本清張、歴史小説の司馬遼太郎が登場し、純文学と大衆小説がともに多くの読者を得た。1968年に川端康成がノーベル文学賞を受け、三島・安部・大江は海外で読まれる作家になった。

  2. 平成・令和の文学(1989〜2026) ネットから生まれる小説と、翻訳で世界に読まれる日本文学No.8

    昭和の終わりの村上春樹『ノルウェイの森』と吉本ばなな『キッチン』から、平成の文学は始まったといえる。ライトノベル、ケータイ小説、「小説家になろう」などネット発の小説が新しい読者と書き手を生み、2020年代には柚木麻子『BUTTER』や王谷晶『ババヤガの夜』が英国で賞を取った。芥川賞では生成AIや読書バリアフリーが話題になり、2025年上半期には両賞が27年ぶりに「該当作なし」となった。