No.221新着 紀伊國屋書店(1927年〜) 新宿の小さな書店から、国内外に店を持つ書店チェーンへ
紀伊國屋書店は1927年1月22日に田辺茂一が東京・新宿で創業した書店である。1964年に本社ビルと紀伊國屋ホールを新宿本店に構え、1969年にサンフランシスコへ海外1号店を出した。2025年8月期の連結売上高は1,407億9,329万円で、2026年6月時点の同社発表では国内72店舗、海外11か国50店舗である。
本文と出典
あらまし
紀伊國屋書店は、1927年(昭和2年)1月22日に田辺茂一が個人営業で東京・新宿3丁目に開いた書店である。同社の沿革によれば、1946年1月16日に株式会社として設立された。本を売るだけでなく、2階の画廊、雑誌の発行、出版部、劇場の運営、洋書の輸入、海外出店と、書店の枠の外へ手を広げてきた会社である。2027年1月に創業100周年を迎える。
主なできごと
・1927年1月 田辺茂一が新宿で創業する
・1931年2月 新刊紹介誌「紀伊國屋月報」を創刊する
・1933年6月 紀伊國屋出版部を設立する
・1945年5月 戦災で店舗が焼失する(12月に焼け跡で営業を再開)
・1946年1月 株式会社紀伊國屋書店を設立する(資本金15万円)
・1949年4月 洋書課を設け、洋書の輸入を始める
・1955年8月 テンジン『ヒマラヤの男』の刊行で出版事業を再開する
・1964年3月 前川國男設計の紀伊國屋本社ビルが竣工する(紀伊國屋ホールを併設、紀伊國屋寄席もこの年に始まる)
・1966年10月 「紀伊國屋演劇賞」を創設する
・1969年2月 初の海外店舗としてサンフランシスコ店を開く
・2023年10月 CCC、日本出版販売とともに「ブックセラーズ&カンパニー」を設立する(2日)
・2024年12月 旭屋書店と東京旭屋書店を完全子会社にする
・2025年8月期 連結売上高1,407億9,329万円、3期連続で過去最高
・2026年6月 創業100周年に向けてコーポレートロゴの刷新を発表する(18日)
くわしく
創業から戦後まで
創業の翌月には2階のギャラリーで展覧会を開き、以後も展示を続けた。1928年には文芸同人誌「文芸都市」、美術評論誌「アルト」を創刊している。1930年に新宿本店を90坪に新築し、銀座にも支店を出した。戦災で店を失った1945年のうちに、焼け跡のバラックで営業を再開した。1947年5月には、前川國男の設計で木造2階建ての店舗を建てている。
出版・取次との関わり
紀伊國屋書店は、売る側であると同時に、本を作る側でもある。1933年に出版部を設け、戦後の1955年に『ヒマラヤの男』で出版を再開し、1963年には「紀伊國屋新書」を創刊した(14年間で164点)。文芸雑誌「風景」は1960年から1976年まで出した。ウィキペディアによれば、現在の出版部門の中心は、PR誌『scripta』と人文書である。
流通の面では、同社の会社概要は主要仕入先に日本出版販売、トーハン、海外の主要出版社を挙げている。つまり、国内の新刊は取次経由で仕入れる書店である。その一方で2023年10月2日、CCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)、日本出版販売と合弁でブックセラーズ&カンパニーを設立した。出資比率は紀伊國屋書店40%、CCC 30%、日販30%で、同社の発表では「書店主導の出版流通改革の実現」が目的である。
紀伊國屋ホールなど文化活動
1964年3月に竣工した本社ビルには、劇場の紀伊國屋ホールが入った。同じ1964年に落語会の紀伊國屋寄席が始まり、ウィキペディアによればこの寄席は2023年10月に700回を迎えた。1966年10月には、サルトルとボーヴォワールが来社しており、同じ月に紀伊國屋演劇賞を創設した。ウィキペディアによれば、同社は紀伊國屋ホールと、高島屋新宿店内の紀伊國屋サザンシアターの二つの劇場を運営している。1974年2月には、ホールで「安吾フェスティバル」が開かれた。
海外店舗
洋書の輸入は1949年に始まった。海外への出店は1969年2月のサンフランシスコ店が最初で、1981年12月にニューヨーク店、1983年12月にアジア・パシフィック地区初のリャンコート店、1990年11月に台北天母店、1992年2月にバンコク店が続いた。近年はフランチャイズでの出店も増えた。2025年8月には、フィリピンのSMシティセブ店を開いている。2026年6月19日にはバングラデシュのダッカ店を開いた(同社は「バングラデシュに初進出」と発表)。
近年の数字
同社が2025年11月28日に出した決算発表によれば、2025年8月期の連結売上高は1,407億9,329万円(前期比104.1%)、営業利益は51億7,496万円、親会社株主に帰属する当期純利益は47億4,194万円だった。5期連続の増収増益で、売上高と利益は3年連続で過去最高である。国内書店事業の売上は472億円で、2024年12月に完全子会社にした旭屋書店・東京旭屋書店の分が加わった。同社の会社概要では、単体の売上高は1,043億円、従業員は約5,000名である。
店舗数は、資料と時点によって数え方が違う。2025年11月末時点の決算発表では、国内が102店舗(紀伊國屋書店71、旭屋書店11、紀伊國屋書籍販売20)、海外が10か国47店舗である。2026年6月18日のロゴ刷新の発表に付いた会社概要では、国内が紀伊國屋書店72店舗と、完全子会社の旭屋書店・紀伊國屋書籍販売の計31店舗、海外が11か国50店舗である。同じ発表の本文には「世界12か国に153店舗」とも書かれ、72+31+50を足すと153になる。12か国には日本が含まれていると考えられる。
評価の分かれる点
チェーン書店が大きくなることの評価は分かれる。品ぞろえと立地で本好きの選択肢を支えているという見方がある一方、大型店や郊外店の増加が町の本屋を減らしたという見方もある(書店全体の減少は、同じ分野のid 83・84を参照)。また、出版社と書店が直接取引する流れを「返品が減り、書店の利益が増える改革」とみる人と、「出版社や取次の負担を書店に移すもの」とみる人がいる。ブックセラーズ&カンパニーの成果は、確認できた範囲では、まだ評価を決められる段階にない。
くらさんの考察
紀伊國屋書店の歩みは、書店が「本を並べる店」から「人が集まる場所」へ広がってきた歴史でもある。創業の翌月に画廊を開き、1964年に劇場を本社ビルに入れたことは、本を買う目的がなくても人が来る理由を、早くから店の中に作っていたと考えられる。
また、海外出店は1969年から続いており、近年の売上の伸びは国内書店だけでなく、法人向けの外商や海外を含む三つの事業が支えている(決算発表では主力3事業とも3年連続の増収)。町の本屋が減るなかで大手が伸びているのは、店舗の規模だけでなく、事業を分けて持っていることの違いが出ているのではないか。
ジージへの問いかけ
・ジージが初めて紀伊國屋書店に入ったのは、どこの店で、何を探しにでしたか。
・本屋に劇場や画廊があることは、本を買う人を増やすと思いますか。
・書店が出版社と直接取引をするようになると、並ぶ本は変わると思いますか。
出典
・紀伊國屋書店「歴史・沿革」(1927〜1952年) https://corp.kinokuniya.co.jp/history/
・紀伊國屋書店「歴史・沿革」(1955年〜) https://corp.kinokuniya.co.jp/history/?page=2
・紀伊國屋書店「会社概要」 https://corp.kinokuniya.co.jp/about/company/
・紀伊國屋書店 2025年8月期 通期決算発表(2025-11-28) https://kyodonewsprwire.jp/release/202511259762
・紀伊國屋書店 創業100周年を機にコーポレートロゴをリニューアル(2026-06-18) https://kyodonewsprwire.jp/release/202606160920
・紀伊國屋書店 バングラデシュに初進出(2026-06-10) https://kyodonewsprwire.jp/index.php/release/202605229542
・ブックセラーズ&カンパニー設立の発表(2023年) https://kyodonewsprwire.jp/release/202309270291
・ウィキペディア「紀伊國屋書店」 https://ja.wikipedia.org/wiki/紀伊國屋書店
動画
・紀伊國屋書店 新宿本店へようこそ!(紀伊國屋書店チャンネル / Books Kinokuniya Official Channel)https://www.youtube.com/watch?v=aJRUaMnE59E
関連動画
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